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青い衝撃と豚のチラガー、那覇・第一牧志公設市場で知る「沖縄の胃袋」の深淵

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​沖縄旅行の醍醐味は、エメラルドグリーンの海や首里城だけではない。本当の沖縄、すなわち「ウチナーンチュの生」を感じたければ、迷わず市場へ向かうべきだ。

​迷路のようなアーケードを抜け、漂ってくる磯の香りと独特の熱気に身を投じる。そこには、スーパーマーケットの整然とした陳列棚からは決して得られない、圧倒的な「食の生命力」が脈打っている。

​迷宮の入り口、第一牧志公設市場

​那覇のメインストリート、国際通りから一歩脇道にそれると、そこは別世界だ。2023年にリニューアルオープンした「第一牧志公設市場」は、近代的な建物になってもなお、中身は昔ながらの「沖縄の台所」そのものである。

​一歩足を踏み入れると、色鮮やかな熱帯魚のような魚、無造作に吊るされた豚の顔(チラガー)、そして見たこともない巨大な島野菜が並ぶ。観光客が「これ、本当に食べられるの?」と足を止める光景は、もはや市場の日常風景だ。

​青すぎる衝撃、イラブチャーとの遭遇

​市場の鮮魚コーナーで、観光客が最も足を止める場所がある。それは、まるでペンキを塗りたくったような鮮やかな「青色」の魚が並ぶ一角だ。

​その名はイラブチャー(アオブダイ)

​初めてこの魚を見た観光客の反応は、だいたい二通りに分かれる。「うわっ、毒持ってそう!」と後ずさりするか、「CGじゃないの?」と指をさして固まるかだ。

​ある日のこと。私の隣にいた老夫婦がイラブチャーを前にして、深刻な顔でヒソヒソ話をしていた。「お父さん、これ熱帯魚ショップから逃げ出してきたんじゃないかしら」「いや、これはきっと観賞用を間違えて並べてるんだよ」

​しかし、店主が手際よくその「青い皮」を剥ぎ、真っ白な身をお造りにしていく様子を見ると、彼らの表情は驚愕へと変わる。見た目のサイケデリックさに反して、その身は淡白で上品な白身。酢味噌(シークヮーサーを効かせたものなら最高だ)でいただくと、見た目の衝撃などどこへやら、箸が止まらなくなる。

​「青い魚を食べる」という背徳感に近い高揚感。これこそが沖縄の市場でしか味わえない、最高のアトラクションかもしれない。

​豚は鳴き声以外すべて食べる

​精肉コーナーへ足を向ければ、そこには沖縄の食哲学が詰まっている。沖縄には「豚は鳴き声以外すべて食べる」という言葉がある。文字通り、頭から足の先まで無駄にしない。

​ショーケースに並ぶのは、切り身の肉だけではない。顔の皮である「チラガー」、耳の「ミミガー」、足の「テビチ」、さらには内臓の「中身」。サングラスをかけられたチラガーがディスプレイされている光景には、思わずくすっとしてしまうが、これは命を余すことなくいただくという、深い敬意の表れでもある。

​コラーゲンたっぷりのテビチの煮付けを口に運べば、翌朝の肌の調子が楽しみになる。市場のおばぁたちは皆、肌がツヤツヤしている。その秘訣は、間違いなくこの豚料理にあるのだろう。

​島野菜が教えてくれる「医食同源」の知恵

​野菜コーナーに並ぶのは、ゴーヤーだけではない。

  • ヘチマ(ナーベーラー):煮込むとトロトロになり、味噌との相性が抜群。
  • ハンダマ(水前寺菜):葉の裏が紫色の、鉄分豊富な造血の薬草。
  • 島らっきょう:独特の辛味と香りが、泡盛を無限に誘う。

​沖縄では食を「クスイムン(薬物)」と呼び、日々の食事が体を整えると考えてきた。市場を歩いていると、おばぁたちが「これは血が綺麗になるよ」「これは夏バテにいいさー」と、教科書には載っていない生きた知恵を教えてくれる。

​「これ、どうやって食べるの?」と聞けば、レシピだけでなく、時には「今すぐ食べなさい」とおまけのサーターアンダギーまで付いてくる。この温かなやり取りこそが、市場という場所を単なる買い物の場以上の「地域のコミュニティ」たらしめているのだ。

​2階の食堂で「持ち上げ」を体験する

​市場の醍醐味は、1階で買った食材を2階の食堂で調理してもらう「持ち上げ」システムにある。

​自分が選んだイラブチャーが刺身になり、夜光貝がバター炒めになり、テーブルに並ぶ。さっきまで氷の上に並んでいた命を、その場でおいしくいただく。このダイレクトな食体験は、都会のレストランでは絶対に味わえない。

​オリオンビールの生を流し込みながら、市場の活気をBGMに新鮮な魚介を頬張る。隣の席の観光客が、イラブチャーを恐る恐る口に運び、「あ、美味しい!」と目を見開く瞬間を見届けるのも、また一興だ。

​市場を歩くことは、沖縄の心に触れること

​沖縄の市場は、単なる観光地ではない。そこには、厳しい自然環境の中で生き抜いてきた人々の知恵と、命に対する謙虚な姿勢が息づいている。

​派手な色の魚も、少しグロテスクな豚の顔も、すべては島の人々の血肉となり、長寿の源となってきた。市場を歩き、おばぁと話し、見慣れない食材に挑戦してみる。そうすることで、あなたはガイドブックの表面をなぞるだけではない、本当の「沖縄の味」を知ることになるだろう。

​次に沖縄を訪れる際は、ぜひ空腹で市場へ向かってほしい。そこには、あなたの常識を心地よく揺さぶる、青くて熱い食文化が待っている。

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