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「おい、これマジで飲み物か……?」
真夏の沖縄、那覇空港に到着したばかりの友人を連れて、私は真っ先にオレンジ色の看板を目指した。沖縄県民(ウチナーンチュ)のソウルフードならぬソウルドリンク、A&W(通称エンダー)のルートビアを飲ませるためだ。
キンキンに冷えた霜降りのジョッキが運ばれてくる。私はごく自然に喉を鳴らして飲み干すが、友人はジョッキから漂う「ある匂い」を嗅いだ瞬間、彫刻のように固まった。
「……なぁ、これ、飲むサロンパスじゃないよね?」
ルートビアの原料:薬草たちが織りなす「禁断の調べ」
友人の鼻が捉えたその正体こそ、ルートビアの真髄である。 「ルートビア」という名前だが、ビールのような泡立ちがあるだけで、アルコールは入っていない。その名の通り「ルート(根っこ)」から作られたボタニカルな炭酸飲料なのだ。
かつてはサッサフラスという木の根皮が主原料だったが、現在は様々なハーブやスパイスをブレンドして、あの唯一無二の味が作られている。
- ウィンターグリーン: これがあの「湿布」のようなスースーする香りの主犯。
- サルサパリラ: ユリ科の植物の根。独特の苦味と深みを与える。
- バニラ&リコリス: 甘みとコクをプラス。
- ナツメグ、シナモン、クローブ: 複雑なスパイシーさを演出。
つまり、ルートビアは「飲むハーブティー」の炭酸版と言っても過言ではない。「体に良さそうな成分ばっかりなんだよ」と私が教えると、友人は「良薬は口に苦しってレベルじゃないだろ!」とツッコミを入れながら、戦々恐々とジョッキを口にした。
歴史が証明する「薬」としてのルーツ
ルートビアの歴史を紐解くと、友人の「薬っぽい」という直感はあながち間違っていない。
19世紀のアメリカ、薬剤師のチャールズ・ハイアーズが、数種類の薬草をブレンドした健康飲料を万博で発表したのが商業的ルートビアの始まりだ。 沖縄に上陸したのは1963年。アメリカ統治下の時代に、日本初のファストフード店としてA&Wが屋宜原(やぎばる)にオープンしたのがきっかけだ。
以来、私たち沖縄県民にとって、ルートビアは「おじいもおばあも飲んでいる、当たり前の飲み物」として定着した。ステーキやハンバーガーの脂っこさを、あの強烈なハーブの香りが一気に洗い流してくれる快感。これを知らずして沖縄の夏は語れない。
衝撃の初体験:友人が見せた「顔芸」の数々
さて、勇気を出して一口すすった友人の反応は、期待を裏切らないものだった。
「……っ!?!?!?」
一瞬、目が見開かれたかと思うと、次は酸っぱいものを食べたような顔になり、最後には遠くを見つめるような虚無の表情に。口の中でウィンターグリーンが暴れ、バニラの甘みが追いかけっこをしている様子が、彼の表情筋から手に取るようにわかる。
「どう? 美味しいでしょ?」 私がニヤニヤしながら聞くと、彼は絞り出すような声で答えた。 「……味が、情報過多なんだよ……。喉を通る感覚が、完全に保健室の香りなんだもん……」
ところが、ここからがルートビアの恐ろしいところだ。 店を出て国際通りを歩いている最中、ふと友人が呟いた。 「……なぁ、さっきの変な飲み物、もう一口飲んだら正解が分かる気がするんだけど」
「おめでとう。それが中毒の始まりさぁ」
私は勝利を確信した。ルートビアは、一度その「矛盾」を受け入れてしまうと、脳がその刺激を欲し始める魔法の液体なのだ。
【おまけ】ルートビアの最高の相棒「カーリーフライ」
ルートビアを語る上で、忘れてはならない名脇役がいる。それが「カーリーフライ」だ。
普通のフライドポテトを想像してはいけない。これは、ジャガイモをぐるぐると螺旋状にカットし、数種類のスパイスをブレンドしたオリジナルの衣をまぶして揚げたものだ。
「このポテト、くるくるしてて面白いな」 と、さっきまでルートビアに悶絶していた友人が、今度は興味津々でポテトを口に運ぶ。 「……うわ、何これ! めっちゃ旨い! スパイスが効いてて、止まらなくなるやつだ!」
そうなのだ。カーリーフライのこの絶妙なスパイシーさと塩気が、ルートビアの薬草感あふれる甘みと完璧にマッチする。ルートビア、ポテト、ルートビア、ポテト……。この「無限ループ」にハマったとき、人は初めて沖縄の「エンダー文化」を真に理解したと言える。

【さらに禁断】究極のデザート「ルートビアフロート」
「……まだ、先があるのか?」 カーリーフライを完食し、ルートビアの中毒性に気づき始めた友人に、私はとどめの一撃を放った。
「ルートビアは、おかわり自由だけじゃない。ソフトクリームをのせると、世界が変わるよ」
そう、これこそが「ルートビアフロート」だ。 スパイシーなルートビアに、濃厚なソフトクリームが溶け出す。するとどうだろう。あの「湿布感」が不思議なほどマイルドになり、まるで高級なバニラコーラか、あるいはもっと複雑で高貴なデザートへと変貌を遂げるのだ。
「うわっ、これ……さっきまでのトゲが全然ない! めちゃくちゃクリーミーで旨いじゃん!」 友人は目を輝かせ、さっきまでの「悶絶顔」が嘘のような笑顔になった。シャリシャリに凍ったルートビアの泡と、溶けかけのクリームが混ざり合うあの瞬間。これこそが、沖縄の暑い夏を乗り切るための、最高のご褒美なのだ。
ルートビア:一度ハマれば「勝ち」である
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独特すぎる香りと味のハーモニー。初めて飲む時の「えっ、無理!」という衝撃が、いつの間にか「あれがないと物足りない」に変わる瞬間。その化学反応を見るのが、私はめっちゃ大好きだ。
もしあなたが沖縄に来ることがあれば、ぜひ勇気を出してジョッキを掲げてほしい。その一口が、あなたの新しい扉を開くかもしれない。……まあ、開かずにそのまま閉まる可能性も十分にあるけれど。
飲んだことがないという人で、チャレンジしてみたい場合はどうぞ。知り合いや職場の仲間にもぜひ、チャレンジさせてみてくれ。まずはのけぞるだろうから・・・w。

